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【解説】 ファミコンのダンジョン風BGM(ループ用)

この解説記事の楽曲は

【完成曲】 ファミコンのダンジョン風BGM(ループ用) - 地下音楽工房

です。

わずか12小節の短い曲とは言え、三パートに分かれており、曲全体としての起承(転)結があります。

まずはAパート。ダンジョン序盤の、緊張はしつつもまだまだ元気な感じのイメージです。
修飾的な音符を除けば二分音符のみという簡素なメロディーですが、メロディー全体としては下降ラインであるものの、音形としては上昇していることで、緊張感が徐々に高まっていく感じを表現しています。
内声パートはマーチ風のリズムのバッキングパターンですが、一拍目が休符となっているので、この部分にベースの最低音を入れています。何せファミコンでは音程を出せるチャンネルが三つしかないので、いかに休符部分を活用するかがチップチューンを作る上で重要なポイントだと思います。
ベースパートは、ウォーキングベース風に八分音符でテクテク歩いている感じに刻んで行きます。三角波はこの音域だとかなり引っ込んで聞こえるので、オクターブを上げたり(メロディーの音域も低めなのでバランス的に却下)、曲全体を移調したりもしてみましたが、いまいちしっくりこないので結局そのままにしておきました。

続いて、Bパート。Aパートの長めの音価のメロディーと対比するように、十六分音符の細かいアルペジオフレーズとなっており、モンスターに遭遇した、あるいはトラップに引っかかったなどの危機的状況に遭遇したイメージです。
ディミニッシュコードが連続する不安な感じのフレーズですが、細かいところを言うと6小節めの最後の部分はディミニッシュのコードトーン以外の音程を含んでいます。この部分でちょっと違和感を出して、音形が上がる次の繰り返しフレーズのために力を溜めているというか…。逆に8小節目の最後はパートの終わりとしてまとまりが出るようにコードトーンの音程になっています。
Aパートでベースを担当した三角波は、ここではメロディーよりも高い音域でハーモニーを奏でます。各チャンネルが臨機応変にメロディー・ハーモニー・ベースと入れ替わるのがファミコンミュージックの特徴とも言えます。
Aパートは割りと低音域中心だったので変化をつける意味でもBパートはベースはお休みしています。強いて言えば、アルペジオの最低音を出す内声パートが主メロディーであるとともにベースであるとも言えます。

Cパート。危機的状況は去ったものの怖気づいた、道に迷ったなど不安の状態が続くも後半はやや気を取り直したみたいなイメージです。
頭の部分はこのメロディーに元々ディミニッシュのコードを当てていて、ベースのフレーズも全く違っていたんですが、半音刻みで下がっていくコードを思いついてこのように変更しました。音楽的には面白い感じになりましたが、いわゆるBGM、劇伴の曲としては元のままの方がより「らしく」あったかな、とも思います。
三角波は高い音域だとフルートっぽい綺麗な音になるので、メロディーを担当させてみましたが、やや唐突な感があったかも。元々は矩形波が同じオクターブで繰り返すフレーズでした。
ベースはループするAパートの八分音符の刻みに上手く繋がるように最後は少し弾むようなリズムにしています。

…そんなわけで、今回チップチューンに初めて挑戦してみましたが、ファミコン世代としては非常に懐かしくもあり面白かったです。
ファミコンのサウンド仕様は現代から見ると非常に制限されているものの、メロディー・ハーモニー・リズムといった作曲の最もベーシックな部分を勉強できる点や、無料で入手できるチップチューン向けの音源が公開されていたり、低スペックのPCでもできることからむしろ(自分も含めた)作曲・DTM初心者の方々にも是非挑戦してもらいたいジャンルだと思います。